紫外線殺菌の効果
▮ 紫外線
殺菌に必要な紫外線波長はUV-C100nm~280nm
紫外線(ultraviolet ray=UV)とは、可視光線よりも波長の短い不可視の電磁波のことを指します。
紫外線は、波長の長いものからUV-A(315nm~400nm)UV-B(280nm~315nm)UV-C(100nm~280nm)の3種類に大別され、いずれも太陽光に含まれています。中でもUV-Cには強い殺菌作用があることが知られていますが、通常はオゾン層で吸収されほとんど地表
には到達しません。現在ではUV-Cと同じ波長域の光を照射する光源が開発され、殺菌灯として使用されています。
その効果は、各種ウイルス、細菌等も不活化・殺菌することが各種研究機関で実証されています。
▮ 紫外線による殺菌原理
紫外線による殺菌の構造については古くから研究が進められている一方、現在でもまだ明らかになっていない部分
も多くありますが、おおよそ次のように考えられています。
ウイルスや菌などが持つ細胞内のDNAやRNA(細菌の原形質である核酸)にUV-Cが吸収されると、細胞の
DNA組織が破壊され、新陳代謝に障害を起こし増殖能力が失われ、その結果菌類が死滅に至るものと考えられて
います。種類や環境によって効果は異なりますが、紫外線(UV-C)による不活化・殺菌が無効なウイルスや菌は
存在しないと考えられており、カビ・原生生物・寄生虫類などに対しても効果
▮ 紫外線の殺菌力と紫外線量の関係
紫外線UV-Cが殺菌作用をもたらすのは、細菌、ウイルス、カビ、原生動物、寄生虫類などがあげられます。一般的に、同じ細菌でも乾燥状態より湿った環境の方が紫外線UV-Cに対する耐性が強くなり、またウイルスや菌の種類、大きさや形状、使用する温度・湿度環境などにより、紫外線UV-Cに対する感受性は大幅に異なります。紫外線照射装置による殺菌は、その機器が出すことのできる紫外線量(強度)を、どれだけの時間照射するかによりその殺菌力は変わります。
このことは、蓄積での紫外線照射量のため、照射時間を2 倍にすれば紫外線照射強度を1/2 にしても殺菌効果は同じということになります。
但し、紫外線殺菌力は照射する対象までの距離により紫外線照射量(強度)に違いが出るため、照射距離に応じた適切な運用が大切な条件となり注意が必要となります。
紫外線の殺菌力:紫外線照射量(μW/㎠)×照射時間(秒)
▮ 各種ウイルス・菌の不活化に必要な紫外線照射量
紫外線の波長別殺菌効果は JIS Z8811-1968 で詳細が示されています。この中で 253.7nm の波長の殺菌効果相対値を「1.00」としています。
波長 275.3nm の殺菌効果相対値は「0.72」とされており、それにより補正した紫外線照射強度を下表(黄枠)に示します。
■紫外線照射によるウイルス・菌など99.9%不活化時の紫外線照射強度
12,550μJ/㎠
5,510μJ/㎠
12,940μJ/㎠
8,840μJ/㎠
13,060μJ/㎠
グラム陰性菌
紫外線照射強度
253.7nm
275.3nm
相対値:1.00
相対値:0.72
9,800μJ/㎠
4,300μJ/㎠
10,110μJ/㎠
6,900μJ/㎠
10,200μJ/㎠
大腸菌
赤痢菌(志賀菌)
ジフテリア菌
パラチフス菌
コレラ菌
13,060μJ/㎠
14,080μJ/㎠
15,360μJ/㎠
115,200μJ/㎠
46,080μJ/㎠
ウイルス
紫外線照射強度
253.7nm
275.3nm
相対値:1.00
相対値:0.72
10,200μJ/㎠
11,000μJ/㎠
12,000μJ/㎠
90,000μJ/㎠
36,000μJ/㎠
インフルエンザウイルス
A型肝炎ウイルス
ポリオウイルス
アデノウイルス
コクサッキウイルス
【参考文献】・河端俊治 , 原田常雄 , 殺菌燈による水の消毒 (1952) ・白石啓文 , 殺菌灯照射による水の殺菌について (1959)
・John E.Kaufman,IES Lighting Handbook 5thEdition(1972) ・S Aydinlim, J Krochmann, CIE journal(1985)
・The IESNA Lighting Handbook(2000) ・平田強 , 岩崎達行ほか , 紫外線照射 - 水の消毒への適応性 -(2008)
※上記の紫外線照射量は、紫外線殺菌装置各社の発表している数値を引用し算出した数値を含みます。
UV-C 275nmの殺菌強度はJIS規格の殺菌効果相対値で示されている
▮ Cov-2-SARS コロナウイルスやCOVID-19 新型コロナウイルスに対する効果の情報
感染性が非常に高い新型コロナウイルス等の効果を調べるためには、厳重な安全対策がとられた専門研究機関や実験室などが必要です。そのため一般企業では簡単に効果を記述することが出来ません。従って下記情報は各国大学等の研究機関のWEB上で発表されている情報となります。
・コロンビア大の研究チームは2013年から薬剤耐性菌に対する遠紫外線C 波の有効性の調査を開始した。次に、インフルエンザを含むウイルスへの
遠紫外線C 波の利用についても調べ始めた。新型コロナウイルスを研究対象としたのはつい最近のことであるが、表面に付着した新型コロナウイルスを
UVC 線が数分以内に死滅させることが既に明らかになっているという。(コロンビア大学放射線研究センター(Center for Radiological Research))
・照明製品の最大手であるシグニファイ(ユーロネクスト︓LIGHT)は、米ボストン大学国立新興感染症研究所(NEIDL)と共同で研究を行い、
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルスである SARS-COV-2 の不活性化に、シグニファイのUV-C ライト技術が有効であることを
実証しました。 ボストン大学医学部の微生物学准教授、アンソニー・グリフィス(Anthony Griffiths, PH.D.) 博士率いるチームは、SARS-COV-2 の
感染拡大の当初から、この領域における科学的進歩に貢献するツールの開発に取り組んできました。研究ではウイルスを植え付けた物質を使用し、
シグニファイ製の光源を用いてUV-C 照射量を変更しつつ、さまざまな状況下における不活性化能力を測定しました。 照射量を5mJ/cm2 にしたところ、
6 秒間でSARS-COV-2 ウイルスが99%減少しました。このデータに基づき照射量を22mJ/cm2 にすると、25 秒間で99.9999%減少することが確認
されました。(ボストン大学国立新興感染症研究所(NEIDL))
その他2020年に入り、新型コロナウイルスの蔓延と共に世界各所に於いて、SARS-COV-2 に対して紫外線UV-Cが有効であるとの研究が多数報告されています。
さらに、「新型コロナウイルスの紫外線耐性はインフルエンザウイルスよりも低い」 との記述もあり、紫外線照射装置による殺菌には期待が持たれています。
2020.09.15